【Skills of Australian Football】ザ・ハンガー

【Skills of Australian Football】ザ・ハンガー

2018年11月12日 0 投稿者: Oko Compton

オーストラリアンフットボールの真骨頂。プレーヤーがパックの真上に飛び上がりビッグマークをつかむあの瞬間-重力への挑戦と完全なスキルとが融合する時だ。

 

オーストラリアンフットボールのコメンテーターが過去に叫んだコメントで最も有名な言葉として今でも残るこの3単語、「ジェザレンコ!ユービューティー!(やったぜジェサレンコ!)」。
1970年のグランドファイナルのセカンドクウォーターの後半、チャンネル7のマイケル・ウィリアムスンは、カールトンFCのアレックス・ジェザレンコが、コリンウッドFCの大男グラハム・【ジャーカー】ジェンキンの上に飛び上がり、後に「今世紀最高のマーク」といわれるようになったマークをつかんだその瞬間の興奮を純粋に描写したコメントだ。ジェザ(ジェサレンコ)のマークはあまりにも有名だったため、後にトヨタ車のテレビCMでその成功をたたえられたほど。
実際、ウィリアムスンとジェザレンコは(現在も良き親友である)フットボール界、メディア界でそれぞれ積んだ彼らのキャリアの中で、何よりもあのマークについて多く質問を受けるはめになるのである。

そして現在でも、オーストラリア中の校庭や公園で行われるキックトゥーキック(オージールールのカジュアルバージョン)のゲーム中に誰かが【スペッキー(ハンガーの別称)】をつかんだ時はいつでも、子どもたちが「ジェザレンコ!ユービューティ!」と叫ぶのである。

ザ・ハンガー-ジェザレンコが生み出したあの瞬間をシンプルに描写している言葉-オージールールをその他のどのフットボールコードからも際立たせているものである。
ボールが宙に飛び、プレーヤーが走って他のプレーヤーの上に飛び上がるのに時間の余裕があるような時は、観ている者は皆期待に胸を躍らせる...あの瞬間に勝るものは何もないからだ。
正しい判断力とタイミング、そしてハンガーを正しく実行できる者はファンの人気選手になれる。

 

ジェザレンコは別として、空中に強い選手を挙げると、元アデレードFCのハイフライヤーである、トニー・モドラとブレット・【ザ・バードマン】バートンの2選手、コリンウッドFCのロス・【トゥイギー】ダン、ホーソーンFCのピーター・ナイツ、ノースメルボルンFCのフィル・【スネーク】バーカー、メルボルンFCのショーン・スミス、カールトンFCのピーター・ボーサストウ、シドニーFCの評判選手ウォーウィック・キャパ―、タイガースFCのロイス・ハートとマイケル・【ディスコ】ローチ、ジロングキャッツFCの大迫力選手ギャリー・アブレット・シニア、そしてセイントキルダFCとエセンドンFCの多才、ブレンドン・ゴダード等を含む数名の選手が頭に浮かんでくる。

 

過去50年間のグランドファイナルは、ハンガーの大舞台となってきた。
1977年の引き分け戦は、残り時間わずか数秒のところで同点に持ち込んだダンによるパックからの見事なマークとゴールで知られているし、1978年には、頭を強打した後でも前進し、試合が厳しい接戦になっている時にナイツがスペッキーをつかんだこともあった。その同じ試合で、コーチ、ロン・バラッシが選手達に出した「スネークにでかいキックを蹴れ」という指示が選手達の耳に鳴り響き、バーカー(スネーク)がホークス選手達のパック真上に飛び上がり、グランドファイナルマークの中でも指折りの一つをつかんだこともあった。引き分けとなった2010年グランドファイナルでは、極度のプレッシャーとニーズに見事な才能が合わさり、ブレンドン・ゴダードがスクエア内でマークをつかみ、セインツにリードを与えるゴールを蹴った。

 

初期の頃から、ジョン・コールマンやボブ・プラット、ディック・リーのような選手達は、ボールを追いかけて空中高く飛び上がっているところをたびたび写真に写されていたものだが、今日では、ジェレミー・ハウ(メルボルンFC、コリンウッドFC)がラウンド一のマークつかむこと等はほぼ毎週の出来事になってきているのである。

 

 

そして、1981年に西オーストラリアから勧誘されたボーサストウだ。【ザ・バズ】と自らを称していたボーサストウは、彼が初めて出場した試合から、相手選手の上に飛び上がり、ゴールを決め、相手のタックルを突き倒しと、センセーションを巻き起こした。ザ・バズは何でもできた、しかし、カールトンのサポーター達が最も記憶しているのは彼のハイマークだった。

 

「僕はハイジャンプのチャンピオンだったんだ。そのハイジャンプの経歴があったおかげでちゃんと着地する方法が身についていた。そしてそのことは、最高のマークをつかむために必要な能力の大部分を占めているんだ。」とボーサストウは言う。「僕はマーク・オブ・ザ・イヤーとゴール・オブ・ザ・イヤーを同じ年(1981年)に受賞した。そしてその年にプレミアシップも獲得したんだ。」

 

ジェザレンコもまた、自分はハイジャンプが得意だったことで、後にハンガーを試みる際にその特性を役立てることができたことを認めている。「学校に通っていた頃はハイジャンプやロングジャンプ、ホップステップジャンプをするのが大好きだった。だから脚が強かった。でもトレーニングで特別何かしていたわけじゃない。主にボールタッチの練習をしていたね。誰かに10m離れたところから自分に向かって思い切りボールを蹴ってもらい、それをマークする練習だよ。マークする時のタイミング調整は意識的に練習したね。僕らがキャンベラでのトレーニングでやっていたのは、エンドツーエンドキックの練習なんかなんだけど、ボールをとろうと走っていって誰かの背中に飛びあがるんだ。1967年にカールトンFCに入ってからもその練習は継続したよ。ボールは1つしかないからね、ボールがほしけりゃどうにかして取りに行くしかないだ。」

 

ボーサストウは、「僕らがプレーしていたグラウンドは、今のグラウンドに比べるとひどいものだった。」と振り返る。また、こうも言う、「現在プレーされているカーペット(グラウンド)でプレーしたら自分がどれだけ上手い選手になれるだろう。とよく考えるよ。今のゲームは規則的過ぎるし、無機質だ。僕が一番がっかりだと思うことは、ハイマークの少なさだね。30年以上経った今でも自分がつかんだマークの映像を見ることがあるんだ、自分にとっては良いことだけど、今の選手は昔の選手がやっていたようなやり方でグラウンド上でボールを蹴ることがなくなったから、僕がプレーしてた時のような1対1のコンテストを見なくなったね。」

 

ザ・バードマンことバートンにとって、フットボールの走りとジャンプを初めて練習したのはまだ学校に通っていた頃だった。相手選手にマークをスポイルされないように、ボールを最も高い位置でマークするための練習を積んでいた。バートンは、ボールを自分に向かって蹴り上げるという練習を自宅で何時間も続けてやっていた。試合で直感的に行えるように、自分の跳躍とタイミングを完璧なものにしようと一生懸命に練習していたのだ。

 

そしてそのバートンの努力は最終的に報われることになる。歳の割に背が低かったことで、バートンのジュニア時代のコーチ達は、身体をグラウンド上に保ったままパックからのこぼれ球をひろうよう彼に指示していた、しかし、バートンが19歳の時に彼の身長の伸びにスパートがかかったのだ。そのことが、どんな選手とでもマークを勝ち取れる自信をバートンに与えた。そしてその自信ができたおかげで、1998年のストゥートSANFLチームに選ばれ、センターハーフフォワードのポジションでプレーすることになったバートンは、ついにマークをつかむために飛び上がる権利を手に入れたのだ。ザ・バードマンが解き放たれた。

 

 

「僕にとっては、タイミングが一番大事なんだ。」と、1998年の終わりにアデレードFCにドラフトされたバートンは言う。「僕が自分に言いきかせていることは、ボールが見えたら引き留まって、少し遅く踏み出してボールを一番高い位置でつかめ、ということなんだ。マークしようとする時、僕は必ずしも一番大きいマークとかあっと言わせるようなマークをねらうわけじゃない、ただ常にボールから目を離さないで一番高い位置でボールをつかもうとするんだ。」また、バートンは、自分がマークしようとかまえる時に自分の周りに誰がいるのかに注意を向けることはほとんどないと認める。なぜなら、「自分が彼らの上をジャンプしたいからといって、彼らにじっとしてて、と言うわけにはいかないかね。」

 

ジェザレンコ、ボーサストウ、そしてバートンにとって、彼らを最初にゲームに惹きつけたのは、ハンガーをつかむことに対する期待だった。「14歳の時、オージールールを見るようになって、試合結果に予測がつかないところや、他の選手の背中に飛び上がったり、走りながらボールをバウンドするような変わったプレーをするところなんかが大好きだったし、それら全てに惹きつけられたんだ。」と、ジェザレンコは言う。

 

バートンも同意見を示す。「ハンガーが僕がフティをプレーする理由の一つだよ。」と彼は言う。「自分のプレーが大きな歓声を引き起こすのは爽快だね。自分が飛び上がった時に歓声が聞こえて、ボールをつかむことができたらその歓声がさらに大きくなる。」

 

ザ・バズについてはどうか?「オーケイ、自分がでかいハイマークとすごいゴールキックで知られていたのはわかってるよ。」と彼は始める、「でもその3つの内3番目、つまりワンパーセンターがあるってことは本当にすごく良いことなんだ。僕はとても良いチームプレーヤーだった、そしてカールトンの人たちは僕のことを評価してくれていたんだ。その類の選手としてね、しかもミスはしないし、ザ・バズはスーパースターだ!!」


ハンガーのつかみ方

1.ジャンプ
ボールが飛んでくる方に向かって自分の身体が真っすぐになるよう走る。目はボールにしっかりと集中し、ボールに向かって身体が乗り出すよう、踏み切り足(左足)から力強く飛び上がる。

2.シット
相手選手と自分の脚が接触する時、身体をさらに高く持ち上げるため、両脚を伸ばして身体を上に押し上げる。ボールをできるだけ高い位置でつかむために、完璧な位置まで身体を動かす。

3.目は集中
ボールに目を集中させ続け、頭は動かさない。両手は典型的なWの形、両親指がほぼ触れるところまで近づけ、指は完全に伸ばした状態にする。両腕はボールに向かって伸ばす。

4.マーク
ボールがわずかに顔の前にきたところでつかみ、両腕は伸ばしたまま、ボールは指でしっかりと握られているため、ボールの勢いを吸収するよう肘からやや屈曲する。ボールを胸部に向かって引きこみ始める。

 

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