
【Skills of Australian Football】ハンドマーク
2018年8月10日ハンドマークがその存在感を持ち始めたのは、ロン・バラッシのコーチ時代(1965年~95年)にさかのぼる。彼は、身体の前でマークすることで、ディフェンダーがスポイルするチャンスを減らすことができると気づいたのだ。
伝説のコーチ、ロン・バラッシが、カールトンFC、ノースメルボルンFC、シドニーFCにて率いた515試合を通じてずっと、問答無用で行っていた練習メニューの一つ、選手達に、チームメイトに向かってボールを強く、低く蹴るよう指示し、そのチームメイトが正確に、手中にボールをマークするというものだ。バラッシは、フットボールの基礎にはうるさいコーチであり、伸ばした手でボールをマークすることが、彼のプレーヤー達が、相手選手に対し有利になるための方法の一つであることを、バラッシはわかっていた。
正確にとらえた時のハンドマークは、相手を無力にする。特に、自分のポジションを相手の前にしっかりとり、完全に伸びた腕でボールをマークすることができれば、相手が、手を伸ばしてボールをスポイルしようとするのを不可能にすることができる。
元メルボルンFCのプレミアシップキャプテンでもあるバラッシは、最近契約を交わした、有名な新人選手であり、2015年のAFL新星選手として、ロン・エヴァンズメダルを獲得したジェシー・ホーガンを誇りに思うことだろう。彼のデビュー戦である、2015年のラウンド1、対ゴールドコースト戦から、ホーガンはすでにフットボールのために生まれてきたような選手だった。そして、力強いマーク力と正確なキック力で、キーフォワードによりプレーされる、最も記憶に残るデビューシーズンの一つへと自らを導いたのだ。
自分自身の能力を用い、ホーガンは、リッチモンドFCのアレックス・ランスを含む、多くの有能なディフェンダーからマークを勝ち取った。そして、手中に正確にマークすることや、飛んできたボールに向かって走っていく時の素晴らしいタイミングが、彼の持前の能力であり、そのことにより、あの初出場ゲーム以来、早くもホーガンがとても将来性のある選手であると予想されていた。
しかし、ホーガンは、いつも絶えず改善したいと思っていると言う。「僕は走力と上半身の筋力を鍛えてきたんだけど、それで体重が少し増えたから、僕の走りが少し変わると思うね。」「今はマークすることにもっと力を入れて、レベルを上げていこうとしてるんだ。どんなことでも、全てにおいて力を入れて練習して、より上手くなりたい。」
メルボルンFCが期待のできるフォワードターゲットチームになったのは、デイヴィッド・ネイツ、デイヴィッド・シュワルツ、そしてギャリー・ライオン達の時代以来なかったことだが、実に、最初の20試合で134マークをとったホーガンのこの記録(1ゲーム平均6.7マーク)は、偉大なるウェイン・キャリーがノースメルボルンFCでの最初の20試合でとった数より54マーク上回るのだ。(ゲームプランの変更により、未だかつてないほど多くのノンコンテストマークが見られるようになったのは承知の上である)そして、過去15年間中で最も力強いフォワードプレーヤー(ニック・リーウォルト、ジョナサン・ブラウン、マシュー・パヴリッチ、トラビス・クローク、【バディ】ことランス・フランクリン、ジャック・リーウォルト、トム・ホウキンス等)の中で、ホーガンが、平均して1試合につき2つ以上のコンテストマークをとった唯一の選手なのだ。
彼の身長を別とした、ホーガンの優れたマーク力のヒントは、最も高い位置にあるボールを、伸ばした腕でつかむ能力である。彼は空中でのボールの動きを読むのが大変上手く、手中にマークするためにベストなポジションへ自分の身体をもっていくのはほぼ毎回のことである。そしてボールがいったん彼の手中に入ると、めったに離さないのである。どのような天候であっても、そのようにボールをしっかりつかんで離さないことが、上手くハンドマークするために必要な主要材料であることは明らかである。多くのハンドマークチャンピオンプレーヤー達にはそれらの特質があった。リッチモンドFCのマシュー・リチャードソンもその一人である。彼は、ハンドマークでマークを勝ち取ることの重要さを理解していた。「ディフェンダーにボールをパンチされて遠ざけられてしまうチャンスを減らすからね。」と、彼は言う。「ボールをディフェンダーからできるだけ遠ざけることが(ハンドマークの)ねらいなんだ。」
ホーガンがAFL入りしたのは、ルール解釈において、マークしようとしている選手の腕を、相手選手がチョップすることが、厳しく罰せられるようになってきている時だった。以前のルールでは、ディフェンダーは、マークしようとしているフォワードにボールをとられてしまうことを妨げるために、そのフォワードの腕をパンチすることができたのだが、今時では、同じことを行うと、マークをとろうとしている相手選手にフリーキックが与えられてしまうのだ。「審判達は、相手選手の腕に接触することに対してすごく厳しいんだ。」と、リチャードソンは言う。「フォワードがボールを手でマークしようとしている時に腕が完全に伸びた状態だと、ディフェンダーからすれば、腕をチョップする以外には望みはないんだ。そうなるとフリーキックがもらえる。」
この有利な点をもってしても、ホーガンが、キャリーや、カールトンFCのキャプテン、ステファン・カーナハンやホーソンFCのスター選手ジェイソン・ダンストール、ダーモット・ブレルトン達がプレーした、古く、より柔軟なルール上でプレーしたとしても、落とすマークよりも、つかむマークのほうが多いことだろう。
ボールから目を離さない
エディ・ベッツは、ボールが飛んでくる方に身体を真っすぐ向けている。視線はボールに集中し、腕は伸びている。相手選手がスポイルしようと試みる前にボールに手が届くよう、良いポジションにいる。指は真っすぐ伸び、【W】のように上を指している。一旦ボールをとらえると、ボールを取られないよう胸に引き込む。完璧にマークする間、目線はボールに集中し続ける。